総入れ歯とは?特徴・種類・費用などについて詳しく解説!

総入れ歯とは上顎・下顎のどちらか一方、もしくは両方を失った方が使用する入れ歯です。総入れ歯は保険適用で製作することができますが、保険適用外の総入れ歯には様々な種類があり、費用にも大きな違いがあります。

歯を失った際の治療法にはいくつかありますが、歯が失われた状態は見た目だけでなく、発音や飲み込む力などにも影響を及ぼします。場合によっては口腔内だけでなく全身に悪影響が及ぶこともありますが、全ての歯を失った場合に用いられるのが総入れ歯です。たとえ全ての歯を失ったとしても、総入れ歯を入れることで口腔内を健康な歯があるときに近い状態に戻すことができます。ここでは、総入れ歯の特徴や種類、費用などについて解説していきます。

総入れ歯とは?特徴や構造について

総入れ歯

総入れ歯とは、上顎・下顎のいずれか、もしくは両方の歯を失った方が装着する入れ歯です。歯を失った際の治療法には、主に入れ歯・ブリッジ・インプラントの3種類がありますが、入れ歯はほとんどの症例に対応できるというメリットがあります。保険適用で治療が受けられるため経済的な負担が軽減されるのも魅力です。一方で、総入れ歯を装着したときの咀嚼力は天然の歯と比べると20~30%ほどまで低下するため、硬いものが食べにくくなるというデメリットがあります。

加えて、総入れ歯と歯茎の間に汚れが溜まりやすいため、毎日の洗浄を欠かさずに行う必要があるのもデメリットと言えるでしょう。 このような特徴を持つ総入れ歯ですが、総入れ歯は床(しょう)と呼ばれるピンク色の土台と人工歯で構成されています。歯茎部分にあたる床は、入れ歯を安定させる役割を果たしていますが、保険適用で製作される総入れ歯の床には主にポリメチルメタクリレートというプラスチックの一種が用いられます。ポリメチルメタクリレートは透明性が非常に高く、艶やかさも持ち合わせているため、着色を施すことで健康的な歯茎の色合いを再現することが可能です。

人工歯については主に硬質レジンと呼ばれるプラスチックやセラミックから構成されていますが、金属製の人工歯が用いられるケースもあります。なお、総入れ歯に使われる人工歯は機能性と審美性を兼ね備えています。前歯部分は天然歯と同じように見えるように審美性が追及されており、奥歯部分はしっかりと咀嚼できるように作られています。

総入れ歯を製作する際の流れとは?

総入れ歯

総入れ歯はいくつかの工程を経て製作されますが、その流れとしては最初に歯茎の状態などを確認するとともに、レントゲン検査などを実施して治療計画を立てます。次に行われるのが型取りと呼ばれる工程です。歯科領域では歯の型のことを印象、歯の型を取ることを印象採得と言うのですが、この工程ではトレーと呼ばれる器具にピンク色や青色のガム状の印象剤を盛って口の中に入れて型を採取します。

また、歯茎の状態が複雑な場合は印象採得を2回に分けて行うケースもあり、この場合は1回目の印象採得で作製した模型をもとに作られた個人トレーが用いられます。 印象採得の次に行われるのは、咬合採得と呼ばれる咬み合わせをチェックするための工程です。咬合採得では、印象採得で得られた型から作られた咬合床を取り付けて、口全体の状態をチェックしながらパラフィンワックスで咬む位置を調整していきます。また、咬合採得では同時に歯の色についても決定します。 次は試適などと呼ばれる仮合わせの工程で、最終的な総入れ歯を作るためにパラフィンワックスで作られた仮の入れ歯を装着して咬み合わせや見た目などを確認します。試適で問題がなければ最終的な総入れ歯が製作され、最終調整を数回程度行って治療は完了です。

なお、印象採得・咬合採得・試適の後は、それぞれ技工士による製作や調整が行われるため、約1週間ほどの期間がかかります。総入れ歯を作るためには、複数回にわたって歯科医院に通わなければならないので、この点については十分に理解しておきましょう。

保険適用外の総入れ歯には様々な種類がある

総入れ歯

保険適用の総入れ歯は歯茎部分の床がプラスチック製ですが、保険適用外の総入れ歯には様々な種類があります。例えば、床の素材としてコバルトクロムやチタン、ゴールドなどの金属が使われている金属床の総入れ歯は、食べ物や飲み物の温度が感じやすくなるという特徴があります。加えて、丈夫な金属を採用することで、プラスチック製の総入れ歯と比べて汚れが付きにくく、メンテナンスを欠かさなければ数十年にわたって使うことが可能です。

床の素材にはシリコンを使うこともできます。シリコンは薄く柔らかい素材なので、フィット感がある総入れ歯に仕上がるという特徴があります。痛みや歯茎への負担も少なく、金属アレルギーの心配もありません。一方で、シリコンは時間経過とともに劣化するため、長年使用していると咬み合わせの高さなどに変化が生じます。 また、保険適用外の総入れ歯には、磁性アタッチメント義歯やBPSデンチャー、インプラント義歯といった種類もあります。磁性アタッチメント義歯は、残っている歯根に磁性金属、入れ歯側に小型の磁石を埋め込んだ入れ歯です。磁力を利用することで吸着力を高めることが可能で、外れにくく噛む力も強い入れ歯に仕上がります。

BPSデンチャーは、Biofunctional Prosthetic System(生体機能的補綴システム)と呼ばれるシステムによって作られる入れ歯のことで、天然の歯に近い審美性が高い総入れ歯が得られます。機能面や耐久性にも優れますが、対応している歯科医院や歯科技工所が少ないのがデメリットです。 インプラント義歯は、インプラントを土台にした総入れ歯です。安定感が高く、咬み心地が自然といったメリットがありますが、人工歯根を埋め込む手術が必要で、治療期間が長くなるというデメリットがあります。

総入れ歯の治療費はどれくらいが相場?

総入れ歯

上記の通り、総入れ歯には様々な種類がありますが、種類によって治療費にも大きな差があります。保険適用の総入れ歯の場合、上顎・下顎のいずれか一方であれば3割負担で10,000円~15,000円ほど、両顎の場合は20,000円~30,000円ほどが相場です。

なお、令和5年度時点での国民健康保険の負担割合は、原則として70歳未満の方で3割負担、70歳~74歳の方は2割負担、75歳以上の方は1割負担となっています。 金属床の総入れ歯の場合、使用する金属の種類によって費用が変わってきます。金属床の総入れ歯は自由診療なので費用は各歯科医院で差が生じやすいのですが、コバルトクロムの総入れ歯は片顎で50万円から、チタンの総入れ歯は片顎で62万円から、ゴールドの総入れ歯は片顎で69万円からが目安です。

また、シリコン床の総入れ歯は、金属床よりも安価で片顎24万円からが相場となります。磁性アタッチメント義歯については、使用する総入れ歯の費用に加えて、マグネット1か所あたり3万円~5万円程度かかります。BPSデンチャーは片顎35万円からが相場です。 インプラント義歯の場合、治療法によって費用が変わります。

インプラント義歯にはインプラントオーバーデンチャーやAll-on―4といった治療法があるのですが、いずれも他の総入れ歯よりも治療費が高額になります。インプラントオーバーデンチャーで両顎を治療した場合は200万円~300万円ほど、All-on―4では400万円~1,000万円ほどかかるのが一般的です。

総入れ歯は天然の歯と比べると咀嚼力が弱いという側面がありますが、ほとんどの症例に対応できるとともに、保険適用で作製できるので経済的な負担を軽減できるというメリットがあります。また、費用は高くなりますが、自由診療の総入れ歯には様々な種類があります。保険適用の総入れ歯よりも機能性や審美性に優れるので、ストレスが少なく快適な総入れ歯を作ることが可能です。